テレビドラマ「遺産争族」が話題です。

このドラマは資産家である大家族を舞台に妻を亡くした実業家の老人の資産を巡る人間模様を描く作品です。

子や孫、更にその配偶者を巻き込み、それぞれの事情や思惑が絡み、法律問題も含んだ話の展開はなかなか見応えがあります。人間模様として視聴するも良し、法律知識の吸収を期待しても良し、財産の寡多に関わらず多くの人が経験する相続の問題を考えるためにもご覧になってみてはいかがでしょうか。

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あらすじ『遺産争族 第一話』

まずは第1話のあらすじです。

佐藤育生は母一人子一人の母子家庭で育った研修医、母親にとっては目に入れても痛くないほどの自慢の息子だ。

そんな育生には河村楓という恋人がいた。

楓の祖父河村龍太郎は葬儀会社カワムラメモリアルの創業者であり推定資産10億の資産家だった。

二人は龍太郎が入院していた病院で研修医と見舞客として知り合ったのだ。ある日退院の決まった龍太郎が餅を喉に詰まらせ緊急事態に。呼び寄せられる家族、三人の娘とその婿や孫たち。そこへ登場した育生の的確な処置によって龍太郎は無事退院の日を迎えることになるが、家族の心の中にはもしもの時、という思いが芽生える。そう、遺産相続だ。

そんな事情とは無縁な育生は楓との結婚を申し込むため、ちょうど退院祝いをしていた河村家を訪問する。命の恩人となった育生の登場に目出度いと喜ぶ龍太郎、そしてそれを複雑な気持ちで見つめる遺産相続に目覚めた他の家族たち。

場を改めて両家の顔合わせが行われるが、楓の父である龍太郎の婿恒三の出した結婚の条件は佐藤家の一人息子である育生の河村家への婿入だった…

 

遺産”争族”とは?

ちなみに「そうぞく」の字が相続ではなく争族となっていますが、これは遺産相続を巡って元々は仲の良かったはずの兄弟、親族が争い合う様子を指す造語で、誰が言い出したのかはわかりませんがしばらく前から話題に上る言葉です。

それにしてもなぜ相続は争族になってしまうのでしょうか。そもそも相続に関しては民法にたくさんの決め事が規定されていてその通りに進めれば大きな遺恨を残す事も避けられるはず。まずは正確な知識を身につけることで無用な争いを予防しましょう。

では、相続について民法の規定を私たちはどれほど正確に理解しているでしょうか。

ドラマの第1話には早速登場人物の勘違いが含まれていました。

 

相続できるのは誰なのか? ー相続順位

伊東四朗さん演じる資産家の老人は自分の亡き後、三人の娘、娘の婿、その子供とその婿、別の娘の子供(つまり孫)これらは皆同じ屋敷に暮らしているのですが、総勢7人の家族たちが話し合って遺産を分ければいいと言っていました。彼には妻は死別しており居ません。ここで彼は大きな勘違いをしています。

民法はその第5編「相続」の中で8章に渡って、条数で言えば民法第882条から1044条を割いて様々な取り決めを規定しています。

そしてその中には誰が、どの位、相続財産に対する権利を持つのかが決められています。

ドラマの例でいくと、配偶者は他界しておりますので、それ以外の子、親、兄弟等の親類に相続の可能性がありますが、3人の娘、つまり被相続人(相続される側、つまり亡くなった人あるいは亡くなったと仮定する人)となる資産家の老人にとって相続順位第1位の立場である「子」がいますので、他の人たちには相続権はありません。

娘の婿や孫の婿といった姻族(養子縁組をしている場合は除きます)はもちろんですが、直系卑属である娘の娘や息子、つまり孫たちにも相続権はないのです。

では孫にはどんな場合も相続権がないのかと言えばそうではありません。被相続人の家族構成によってそこは異なります。例えば孫が2人いて一方には相続権があり、他方にはないという事もあります。なぜでしょうか。

それは相続には順位というものがあるからです。より順位の高い人がいない場合に初めてより順位の低い人に相続権が生じるわけです。

相続順位は簡単に説明すると以下のようになります。

まず、配偶者は常に相続権を持ちます。

そして配偶者と共に相続権を持つ順位は、

  • 第1位 直系卑属
  • 第2位 直系尊属
  • 第3位 兄弟姉妹

のように決められています。

では、具体的には誰に相続権があるのでしょうか。

私には?あなたには?

それを確かめるには、代襲相続という考え方を理解する必要があります。

更に相続の問題を考える上で理解しておくべきキーワードには、遺言、遺留分、特別受益、特別寄与、相続放棄、単純承認、限定承認、贈与、遺贈、生命保険、相続欠格、相続人廃除、胎児、未成年、成年後見…

まだまだ出てきますが、いずれにしてもケースバイケースで考える必要がありますので自身の場合にどれが当てはまるのかをしっかり把握しておくことが重要でしょう。

 

◆今回のポイント『遺産争族 第一話』

まとめとしては、相続には相続順位というものがあり、配偶者がいれば配偶者、およびより相続順位の高い位置にいる人が相続人となります。第1位がいれば第1位、いなければ第2位、それもいなければ第3位の相続人が相続権を持ちます。まずは基本となるこの事を押さえておきましょう。

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K.I.G.行政書士事務所

東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。