推定10億円の資産を巡る葬儀会社カワムラメモリアル創業一族の争い。

ところどころに法律問題も登場し、視聴者である私たちにもこれから生じるかもしれない現実問題と重ね合わせることでとてもよい法律問題の学習のきっかけにもなりそうです。

それにしても激しく争い合う河村家の人々に平和な時は訪れるのでしょうか。そして素朴な疑問として、育生に財産が渡ることを月子、凛子の二人が警戒することは理解できるのですが、陽子にとっては娘の婿、つまり娘夫妻に財産が渡ることはむしろ歓迎してもいいのではないでしょうか。おカネは親子の情をも超えるってことでしょうか。

今回は気になっていた遺留分という言葉がようやく登場します。

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あらすじ『遺産争族 第七話』

全額を医療団体に寄付するという衝撃的な遺言の内容により、住んでいる家も明け渡して出ていかなければならないのではとパニックに陥っていた河村家の家族だが、育生から、龍太郎が遺言を書き換えたため、家を出て行く必要は無くなったと聞きホッと胸をなでおろす。

ところが龍太郎の弁護士から見せられた新しい遺言の内容に河村家は再び大パニック。新しい遺言は、育生に全財産を譲るというとても受け入れ難いものだったのだ。

ショックのあまり卒倒する陽子。

ようやく退院した龍太郎だが、その龍太郎を囲み、河村家の娘たちは遺言の書き換えを迫る。

傍で一人平然と構える恒三が、遺言書に押された印鑑は自宅に保管されていたものであり、病院にいた龍太郎には押せない。つまり別の人が印鑑を押したこの遺言は無効だと言い始めた。

張り詰めた空気が緩むのもつかの間、今度は育生がこの遺言書は有効だと反論した。入院などの理由により本人が印鑑を押すことができない場合、本人の意を受けて別の人が印鑑を代理で押した場合、過去の判例などから有効とされる場合が多いというのだ。

再び高まる緊張、そしてなぜか龍太郎の顔にも動揺が…

 

複数の遺言書、有効なのはどれ?

ドラマの中で娘たちがふたつ並べられて遺言書を前にして弁護士にどれが有効なのかと尋ねる場面がありました。弁護士の答えは、より日付の新しいものが有効とされます、というものでした。

ところで、このドラマには今までに3つの遺言書が登場しています。

一つは病院で弁護士と医師の立ち会いのもとに作成された危急時遺言。そして、育生に全てを譲ると書いた遺言。これは全文を自分で手書きして署名捺印した自筆証書遺言です。

さらに、その内容は明らかになっていませんが、龍太郎が以前から準備していた、金庫に眠る白い封筒に収められた遺言がありました。

この遺言はどのような形式の遺言書かわかりませんが、資産家で顧問弁護士も付いているような龍太郎ですから、多少手間と費用は掛かりますが無効にされるなどの危険が少ない公正証書遺言かもしれません。

例えばそれが公正証書遺言であったとして、公正証書遺言、危急時遺言、自筆証書遺言、この3つの形式が異なる遺言書のどれが有効とされるのでしょうか。

 

より新しい日付の遺言書が有効

3つの遺言書の中で有効とされるのは日付が一番新しい遺言です。公正証書遺言であっても自筆証書遺言であっても遺言書自体が無効なものでない限り関係ありません。新しい遺言書が有効とされます。ではより古い遺言は無効とされるのでしょうか?
実は全てが無効とされるわけではなく、新しい遺言書と矛盾する部分だけが無効となります。つまり、新しい遺言書が有効、古い遺言書が無効、という言い方は正確ではなく、より新しい遺言書が優先されると考えればいいでしょう。

 

形式の違いと有効無効

先に説明した通り、形式の違いは有効無効に影響しません。有効なのは日付の新しい遺言書です。

では公正証書遺言、危急時遺言、自筆証書遺言が有効無効に関わるのはどんな場合でしょうか。

まず、自筆証書遺言はいつでも取り消すことができます。自分で作成して自分で管理している場合、その遺言書を破るか燃やすかシュレッダーに掛けるかすれば遺言書自体、この世に存在しなくなりますから、好きな時に取り消すことができるのです。

これが公正証書遺言となるとそうはいきません。なぜなら公正証書遺言の場合は同じものが公証役場に保管されることになるからです。手元にある遺言書を破棄してもなかったことにはできません。仮に遺言の内容を変えたり、取り消したいと思った場合は、新しい遺言書を作成して取り消す、あるいは別の内容で書き換える必要があります。

最後に危急時遺言ですが、これには6か月という有効期限がありました。(民法983条)

そのため、危急時を脱したのち、6か月を経過してしまうと無効になります。

 

今回のポイント『遺産争族 第七話』

複数の遺言書がある場合、優先されるのはより日付が新しい遺言書です。

公正証書遺言であってもより新しい自筆証書遺言がある場合はそちらが優先されます。

自筆証書遺言はその全文を遺言者自らが自筆しなければ有効とはされません。また、遺言者による署名捺印が必要となります。(例外あり)

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K.I.G.行政書士事務所

東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。