【Q】夫婦共同で遺言書を作成する事はできますか?

私たち夫婦は長年お互い助け合いながら小さな商店を成長させてきました。その甲斐あってある程度の財産を築く事が出来ましたが、この財産は夫婦二人の共同の財産だと考えています。そこで質問ですが、子供たちに財産を引き継がせるに当たり、夫婦二人共同で遺言書を作成する事は出来ますか?

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【A】専門家の回答

できません。

 

遺言には守るべきルールがある

残念ながら夫婦共同の遺言書を作成することはできません。

遺言書というのは厳格な要式行為であり、民法の規定に厳密に従わなければ有効とされません。

 

民法960条:遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

例えば自分自身で作成する自筆証書遺言の場合、少なくとも以下のような要件を満たさなければなりません。

1.遺言全文を自分の字で書くこと。※

 ※ワープロ等は不可

2.遺言を作成した正確な日付を入れること。

3.遺言作成者の氏名を書き、印鑑を押印すること。

 

夫婦共同の遺言は無効

共同遺言の禁止は民法ではっきりと規定しています。

 

民法975条:遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

民法のこの規定が明らかに示す通り、複数人が共同の遺言を作成することはできない、つまり、夫婦共同の遺言は無効なのです。

 

共同の遺言が無効な訳

現実問題として考えてみると、民法のこの規定は極めて理に適っているといえます。

なぜなら、遺言は遺言者の死亡を持って効力を生じる性質のものだからです。

 

民法985条 第1項:遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

 

もしも、夫婦共同で遺言を作成し、どちらかが先に、例えば夫が亡くなった場合、その時点では遺言はまだ効力を生じず、そのまま、妻が亡くなるまでは中途半端な状態が続きます。

その間に事情が変わって遺言を変更したい、あるいは破棄したいとなった場合、遺言の共同作成者が既に亡くなっている場合、どう扱ったらいいのでしょうか?

 

このような複雑な問題の発生を避ける点でも民法の規定は、なるほどと思えるものとなっているのではないでしょうか。

遺言は一身上の法律行為であり、個人の意思を一方的に表明する単独行為なのです。

 

遺言に拠らず思いを伝えるには

ところで、質問者のそもそもの願いは、夫婦で築いてきた財産を引き継ぐにあたり、子供たちに思いを伝えたいというものでした。

共同遺言はできませんが、子供たちに思いを伝える方法は他にもあります。

最近特に注目されている エンディングノート を活用する方法を検討してみてください。

エンディングノートは様式を含め、自由に作成することができます。相続財産だけではなく、思いも伝えたいと願う親の皆さんにとってぜひ活用してもらいたいツールです。

 

①何を書いたらいいのでしょうか?

②どのように書いたらいいのでしょうか?

③どうすれば 伝わる エンディングノートになりますか?

④エンディングノートの効力は?

⑤エンディングノートが無いとどんな問題が起こりえますか?

 

エンディングノートは市販されているものもたくさんありますし、作成指導を受けることもできます。

今後、さらに普及が望まれる 思いの伝え方 と言えるでしょう。

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K.I.G.行政書士事務所

東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。