【Q】複数の内容が異なる遺言が出きた場合、有効なのはどれでしょうか?

父が亡くなり、遺産相続となったのですが、父は何度か遺言書を書き直していたらしく、複数の遺言書が出てきました。

内容も少しづつ異なっています。

このような場合、どの遺言書が有効なのでしょうか。

私の姉は古くても公正証書になっている遺言書が一番効力があるのではないかと言っていますが…

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【A】専門家の回答

作成日の最も新しいものが優先されます。

 

よくある誤解の例では公正証書遺言が優先されるのではないかという勘違いを耳にすることがあります。確かにその手続きの複雑さ、公証役場での公証人立会いの下で作成されるという物々しさから、公正証書の効力が優先されるのではないかと思われるのも不思議はありません。

しかし、公正証書、自筆証書など遺言の形式に関わらず、一番新しい遺言書が有効なものとして優先的に扱われます。

つまり、公正証書遺言を作成した後、考えが変わった場合、別の遺言書を作成する事によりいつでも遺言の内容を変更することが出来ます。新しい遺言書は自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言のいずれでも問題は無く、それ以前の遺言書すべてに対して優先的に扱われます。

 

では、その他の遺言書はすべて無効となるのでしょうか。

その他の遺言書も全く無効とされるわけではなく、より新しい遺言書の内容と矛盾する部分についてのみ撤回されたものとして扱われます。

 

現実問題としては、たくさんの遺言書が出てくればそれだけ残された家族は困惑するでしょうし、最悪の場合、そこから争いに発展することも否定できませんから、遺言書を新たに作成する場合はそれ以前の遺言書を全て破棄することが望ましいでしょう。

 

遺言とは

そもそも遺言とは何でしょうか。

遺言とは自らの死後に有効となる意思表示を生前に行う事、と言う事が出来ます。

そして、その目的としては自らの財産の処分に関する意思表示が主なものとなりますが、婚外子の認知というような身分上の事項も含まれる場合があります。

 

遺言について法的性質を挙げると次のようになります。

 

・要式行為である

民法に定める方式に従う事が必要であり、これに違反する遺言は無効とされます。(民法960条)

 

・単独行為である

売買契約の様に相手方を必要せず、一方的に行うことが出来る行為です。

 

・死因行為である

遺言者の死亡により効力を生じる法律行為です。

 

遺言ができるのは満15歳以上の者とされています。(民法961条)

ただし、成年被後見人については医師2人以上の立会い下、正常な判断力回復が認められた場合のみ遺言が可能です。

また、代理に親しまない行為であるため、未成年者や成年被後見人等の制限行為能力者についても親権者や後見人等に同意権や取消権は認められていません。

 

遺言の種類

遺言の方式には普通方式と特別方式があり、特別方式というのは普通方式遺言が不可能な特定の条件の下で認められる方式です。たとえば遭難者や死に瀕した人、刑務所の服役囚などが相当しますが、厳格に定められた形式に従う必要があります。

通常、遺言を作成する場合は普通方式となりますが、その形式には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。

このうち一般的に用いられるのは全てを自筆で書き署名捺印する、自筆証書遺言と、公証役場において2人以上の立ち会いのもとで公証人によって作成される公正証書遺言のいずれかです。

 

遺言に何を書くか

残された家族への思いなど、伝えたいことを添える事も出来ますが、もっとも重要な目的は「自分が生涯をかけて築いてきた財産を有効に活用してもらうために、自分の死後、誰に引き継ぐか、あるいは託すか」という問題に関する自らの意思を伝え、それを実現させるという事にあります。

誰も自分の大切な財産が自分の死後意味のない使われ方をしてしまったり、更には残された家族に亀裂、分裂をもたらしたり、人間関係を破壊してしまったりする結果を招くことなど望んでいません。どのように自分の遺志を伝えるか、どのように自分の遺産を引き続か十分に検討して遺書にまとめる必要があることは言うまでもありません。

 

エンディングノートの活用も検討

遺言書は民法に定められた様式に従って作成する必要があるなど、自由度はあまりありません。

例えばノート一冊分に渡るような長大な遺言書を公正証書遺言で残すなど現実的とは言えないでしょう。

残された家族に思いを残す方法は遺言書に限りません。

最近話題のエンディングノートの活用も検討すると良いでしょう。

 

・家族一人一人に対する感謝や思い

・友人知人などへの思い

・葬儀の希望

・知らせてもらいたい人

・定期購読や会員の解約

・処分してもらいたい書類等

・延命治療など医療に関する希望

 

まだまだあることと思いますが、これらをエンディングノートにまとめ信頼できる人に託しておくことを検討してみてはいかがでしょうか。

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K.I.G.行政書士事務所

東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。