相続と贈与、さらに遺贈、死因贈与…
よく目にすることのあるこれらの言葉ですが、その違いを正確に理解しているでしょうか?
ここでは贈与と遺贈の違いについて解説します。
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贈与とは
まず贈与ですが、民法549条には「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」とあります。片方が一方的に利益を与えるこのような取り決めを片務契約(⇔双務契約)といいます。一方的な契約ですが、これも契約です。
そのため、贈与を受ける相手方の同意があってはじめて成立します。
また、民法550条は「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と規定していますので、書面による(契約書等)贈与は合意なく取り消すことはできません。
履行の終わった部分、例えば100万円を贈与する契約を交わし、100万円を実際に渡した後、気が変わったとしてもそれを取り戻す事はできません。書面がなかったとしてもできないのです。
100万円のうち、10万円を渡した後で気が変わった場合、はいかがでしょうか。
10万円は書面の有無に関わらず取り戻す事はできません。
残りの90万円の部分については、書面が無ければ取り消すことができますが、書面がある場合はやはり取り消す事はできません。
よく小さな子供が友達同士でビー玉やおはじきを、あげたとか、やっぱりやめるだとか、そんなトラブルを起こす事がありますが、民法ではこのようにハッキリとルールが定められているのです。
いくら一方的な利益供与だとしても、無条件で取り消しができるとあっては、贈与を受けた側も権利が安定せず何の計画も立ちませんから、当然といえば当然ですね。
遺贈とは
では、遺贈とは何ですか?贈与と何が違うのでしょうか?
一言でいうと、「遺贈とは、人が死亡したときに、財産を法定相続人以外の人に与えること」です。
例えば内縁の妻や、本来相続権がない孫(孫は代襲相続人となる可能性がありますが、孫の親、つまり被相続人の子が生きている場合で考えます)あるいはお世話になった第三者等に財産を与えるような場合です。これは遺言書によって行います。
遺贈は贈与とよく似ていますが、贈与は相手の承諾が必要な契約であるのに対し、遺贈は遺言書を作成する人の一方的な意志で行われます。
遺贈の場合は贈与税ではなく、相続税の対象となります。ただし、法定相続人に認められているような税金を軽減するための各種特例等は適用されません。
税制上の扱いの違い
贈与と遺贈には前述の通り、税制上の取り扱いに大きな違いがあります。
課される税金が贈与の場合は贈与税、遺贈の場合は相続税です。これには大きな違いがあります。多くの場合、贈与税は相続税に比べ高額になるからです。
概算ですが、5,000万円の財産を子が1人で相続する場合の相続税は160万円くらい。
同じ財産を第三者が贈与で取得した場合の贈与税は2,300万円くらいになりますのでかなりの差が出ますね。
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K.I.G.行政書士事務所
東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。