遺産争族の第2話は資産家の悩み、築き上げた資産を誰に引き継ぐのかという承継問題が描かれています。家族内での資産の承継はもちろんですが、企業経営者にとっては従業員を抱え、社会的にも責任を担った事業の継続が懸かった事業承継問題も絡みます。

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あらすじ『遺産争族 第二話』

河村家への婿入を決心した育生は大家族河村邸で楓との新婚生活をスタートさせた。相続への思惑を孕み、育生へ疑惑の目を向ける家族たち。更に些細な誤解から楓の心にも小さな疑念の芽が生じてしまう。

一方で資産の継承に心を悩ませる龍太郎は三人の娘やその婿への不信から、資産を有効に使ってくれる人物として育生に期待をかけ、育生に相続財産を引き継がせることは出来ないかと遺言の書き直しを決意、相続遺言関係に強い女性弁護士に相談するのだった。

そして弁護士から育生が信用するに足る人物なのかを確認するよう助言を受けた龍太郎は育生の勤務する病院を訪ね、育生を試すある提案を持ちかける。

思わぬ相続問題に巻き込まれた育生の周りでは家族関係のギクシャクした雰囲気が日々増していく。そしてある日の夕食で育生は「みんなオカシイ、僕はカネは自分で稼ぐ。河村家の財産は欲しくない」と堪らず口に出す。

そして河村家に婿入した育生の真の目的が明かされる…

 

孫に相続権はあるのか?孫の夫には?

この回のポイントは龍太郎が弁護士に相談した「孫の婿に財産を託したい」という願いが叶うかどうかにあります。信頼できない娘婿やいつまでも独り立ちせず親のスネをかじり続ける娘よりも、医師としての志も高い孫の婿に託した方が苦労して築き上げた財産が活かされるのではないかとの龍太郎の思いはとてもよくわかります。しかし法律はそれを許すのでしょうか。

 

さて、河村家の家族構成を振り返ってみましょう。

カワムラメモリアル創業者の河村龍太郎は妻と死別しており、配偶者はいません。娘が三人います。長女には夫恒三と娘の楓、つまり龍太郎にとって孫がいます。次女は夫を亡くしており一人息子が同居しています。さらに三女は独身で単身アメリカに渡りフォトグラファーとして修行中です。

 

法律上の相続人は配偶者およびより相続順位の高い人、ということになっています。

龍太郎の妻は他界していますから配偶者は不在です。

そうなるとまずは相続順位第1位である直系卑属、そしてその中でもより龍太郎に親等が近い(1親等)子に相続権が生じます。つまり3人の娘たちが相続人となるわけです。第1位の相続人が存在しますので第2位以下の相続順位にいる人たちには相続権はありません。

血の繋がりのない娘婿や孫の婿はもちろん、娘の息子や娘、つまり孫たちにも相続権はないのです。

龍太郎の遺した財産は3人の娘が法定相続割合通りであれば1/3づつ均等に分けることになります。

 

※孫に相続権が発生する場合もありますが、それは本来相続すべき息子、娘が故人となっている場合に故人に代わって財産を相続する代襲相続のケースです。今回は当てはまりません。

特定の人に遺産を譲るには

では、龍太郎が孫の婿である育生に遺産を相続させることはできないのでしょうか。

答えは「できます」ということになります。

ドラマの中で女性の弁護士が龍太郎に告げた方法、つまり孫の婿である育生を龍太郎の息子として養子縁組してしまえばいいのです。養子には実子と同等の相続権がありますから、育生が龍太郎の養子となった場合は子は4人ということになります。龍太郎の遺した財産は育生を含めた4人の子たちが1/4づつ均等に分けることになります。

そうしたとしても龍太郎の願い、自分の財産の多くを育生に託し有効に活かしてもらいたいという願いには十分とは言えませんね。他に手はないのでしょうか。

もちろんあります。それは遺言を遺すことです。

今回、女性の弁護士が呼ばれたのも有効な遺言を作成するためでした。

法律上の注意点を考慮しながら有効な遺言をのこし、遺言執行人を指名しておくことで龍太郎の願いはある程度満たされるでしょう。

 

遺言で気をつけるべきポイント

ここで遺言を遺す上で注意すべきポイントを挙げてみます。

キーワードは公正証書遺言、遺留分、遺言執行人です。

これらのキーワードがどのように関係してくるかは、今後の話の展開を見ながら順に説明していきますのでお楽しみに。

今回のポイント『遺産争族 第二話』

特定の人に遺産を譲りたい場合、取り得る方法として養子縁組が挙げられます。

また、有効な遺言を遺し、遺言の執行を信頼できる人に託すということも重要です。

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K.I.G.行政書士事務所

東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。