【Q】自身の重大な過失により(居眠り運転)父親を死亡させてしまいました。私は相続欠格事由に該当しますか?
私は父と母を乗せて車を運転中、事故を起こしてしまい、父が死亡しました。
幸いにも母と私は軽傷で済みました。
原因は私の居眠り運転です。
子が親を死亡させてしまった場合、相続人の資格を失うと聞いたことがあるのですが、私の場合も当てはまりますか?
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【A】専門家の回答
相続欠格とは民法891条の各号に挙げられた相続欠格事由に当てはまる場合に相続権を失うというものです。被相続人を殺害する、あるいは他の相続人(自分と同順位もしくは上位の相続人)を殺害する、または遺産を得る目的で行われた詐欺や強迫といった悪質な犯罪行為が関係しています。では、不注意によるものとはいえ、重大な過失による自動車事故の結果、父親を死なせてしまったという今回のような場合はどうなるのでしょうか。
不注意によって大切な親族を死に至らしめてしまったという心の負い目は大変なものでしょうし、他の親族からの強い圧力も想像できますが、民法891条第1号には「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」とあります。被相続人を死亡させてしまったという今回の質問に当てはまるとしたらこのケースですが、質問のケースは過失により死に至らしめたということですから(重大な過失があるとしても)「故意に死亡するに至らせ」とは言えません。
質問の例では相続欠格事由に該当するとは判断されないでしょう。
では、ここで定議する「故意に死亡するに至らせ」た場合とはどのような場合が考えられるのでしょうか。質問の場合のような過失によるもの(過失致死、重過失致死)は含まれず、故意によるものから結果的に、例えば傷害致死罪に問われるようなケースでも含まれないとされています。
つまり、この民法891条1号に当てはまるのは明確に殺意を持って被相続人を殺害し、殺人罪に問われたような場合ということになります。
現実にそんな事例が起きない事を願いたいものです。
結論を繰り返しますと、交通事故等の過失により被相続人を死に至らせてしまったようなケースで相続欠格とはされることはありません。
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K.I.G.行政書士事務所
東日本大震災をきっかけに、法律、制度、行政サービス等で知らない人が損をする事がないよう、市民に寄り添う市民法務サービスの提供を志し開業致しました。得意分野は相続、遺言、エンディングノートの活用といった市民法務分野ですが、各種許認可、会社設立のご支援等により中小規模の事業者を法律、手続き面で支えるサービスを提供しております。